安藤裕康

安藤裕康

国際交流基金 理事長

TPAM – 国際舞台芸術ミーティング in 横浜に、変わらぬご支援と、深い関心を寄せていただいている日本国内および海外の関係者の皆様に、心からお礼を申し上げます。

国際交流基金アジアセンターが主催団体の一つとなり、TPAMのアジア・フォーカスがスタートしてから今回で6回目となります。これまでの積み重ねにより、TPAMはアジアにおける重要な同時代舞台芸術のプラットフォームのひとつとして関係者に広く認知されるに至り、毎年世界各国から多くのプレゼンターやアーティストが参加するようになりました。TPAMでの上演を契機にアジアの作品が世界に招へいされ、新たな共同制作の企画が生まれ、人や組織のネットワークが繋がり、アジアにおいて持続的な交流や協働が形を成しつつあることを、大変喜ばしく思います。

TPAMでは、今年はダンスにフォーカスして、日本、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシアなどのアーティストの作品を取り上げ、様々な公演プログラムを展開いたします。国内外から多くの団体・個人の参加のもと、ネットワーク拡充・協働のためのミーティングと、公募制のTPAMフリンジも一層充実したものとなっています。そして国際交流基金アジアセンターはアジアにおける更なる協働をめざし、アジアを中心に世界から40名ほどの若手を中心としたプレゼンター・ジャーナリスト・批評家等を招いております。

国際交流基金アジアセンターによるTPAMアジア・フォーカスへの参画は今回で一区切りとなりますが、今後もTPAMが舞台芸術における新しい価値の創出を可能にする画期的な場として、世界の舞台芸術の担い手の間で広く共有され、持続的な協働がTPAMから広がり、アジアおよび世界において実践されていくことを願っております。

 

 

玉村和己

玉村和己

公益財団法人神奈川芸術文化財団 理事長

私どもが主催団体として参画する「国際舞台芸術ミーティング」が横浜で開催されるようになってから、今回で10回目となりました。改めて、この催事を支えて下さる多くの皆さまのご尽力に深く感謝申し上げます。

ダンスにフォーカスした今回も、主催公演である「TPAMディレクション」の主会場となるKAAT神奈川芸術劇場では、世界各国の気鋭のアーティスト達による作品に全施設を会場として提供すると共に、創造型劇場としての特性を活かし、アーティストの創造を最大限にバックアップし、この催事に取り組んでおります。

「芸術の創造、人材の育成、賑わいの創出」というミッションを掲げる当劇場は、引き続き、芸術文化を支える一翼を担っていけるように邁進してまいります。また、この催事が参加される皆様の芸術文化との新たな出会いと交流の場になることを心より願っております。

 

 

近藤誠一

近藤誠一

公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 理事長

TPAMは横浜で10回目の開催を迎え、国内外の舞台芸術に関わるプロフェッショナル達が、毎年2月ここ横浜に集い、様々な交流が行われる光景が定着してきたと感じます。また、TPAMのプログラムは劇場だけではなく、歴史的建造物や公共空間、古い建物をリノベーションした会場などでも行われ、街に広がるものとなっています。こうしたプログラムは、文化芸術の持つ創造性を活かした街づくりに取り組む横浜市や当財団の施策とも親和性が高く、舞台芸術関係者のみならず、市民の皆様にも作品やシンポジウムを通じて、芸術と社会の新たな接点を提案するものと思います。

今年は、TPAMの場も活用しながら立ち上げ、展開してきた「HOTPOT東アジアダンスプラットフォーム」が同時期に横浜赤レンガ倉庫で開催され、ダンス関係者の一層の交流が期待されるとともに、TPAMのプログラムもダンスにフォーカスされています。

今回も、TPAMで国境、世代、ジャンルを越えて舞台芸術に関わる人たちが出合い、新たな可能性を拓くことを期待いたします。

 

 

丸岡ひろみ

Photo by Hideto Maezawa

丸岡ひろみ

国際舞台芸術ミーティング in 横浜 ディレクター
PARC – 国際舞台芸術交流センター 理事長

TPAMは今回もTPAMディクレション、TPAMエクスチェンジ、TPAMフリンジの3つのプログラムを柱に横浜で実施します。2011年に東京から横浜に移り、2015年にアジアにフォーカスしつつ催事全体を拡充、舞台芸術のプラットフォームとしての国際的なモデルのひとつへと成長することができました。

2015年から今回までのように、複数年度にわたる運営基盤が保証され、先を見通しつつ計画し実現するプロセスを踏めたことは、1995年の創設以来のことでした。最近、「今年もTPAMで合おう」という言い方を海外でよく聞きます。何気ないフレーズですが、そのように使ってもらえるプラットフォームが日本にあること。これも一重に参加者の皆様、主催団体の一角を担う国際交流基金をはじめ、関係者の皆様のご支援のおかげに他なりません。

その基盤となった国際交流基金アジアセンターのプロジェクト「文化のWA(和・環・輪)プロジェクト~知り合うアジア~」が終了し、TPAMのアジア・フォーカスが一区切りを迎える今回をもって、TPAMディレクションのディレクター制も一旦総括することになります。そこで、ここでは主にTPAMディレクションについて述べることにしたいと思います。

 

TPAMディレクションでは、東南アジアにフォーカスしつつ、近年は他の芸術分野、とりわけヴィジュアル・アーツの側からの舞台芸術へのアプローチに着目したプログラムを展開し好評をいただきましたが、今回は横浜ダンスコレクションがソウルと香港のフェスティバルと共同で開催する「HOTPOT 東アジア・ダンスプラットフォーム」と提携し、ダンスと身体表現にフォーカスしています(ダンスと身体表現は同じものではありませんが、それについても議論が生まれるきっかけとなればと思います)。

そのため、今回で任期を満了するディレクター(ジューン・タン、コ・ジュヨン、敬称略、以下同様)に加え、ダンスを専門とする過去のディレクター(小倉由佳子、横堀ふみ)、および今回限定の新規ディレクター(ヘリー・ミナルティ)に参加していただきました。「ダンス」をゆるやかな共通項として、この5人のディレクターのノートの間に響き合う要素が見られることは興味深いです。

2018年からディレクターとしてホー・ツーニェンなどの作品を紹介してくれたマックス=フィリップ・アッシェンブレンナーは、任期最終年の今回、TPAMフリンジに参加する庭劇団ペニノの作品にドラマトゥルクとして関わっています。他にも、これまでのディレクターがさまざまな経路でTPAMに直接・間接に関わってくださっています。そうした多様で予想外な関わり方は、プラットフォームの新たな可能性を広げてくれることでしょう。

エコ・スプリヤントとピチェ・クランチェンの新作にTPAMが共同製作者として参画し、今や巨匠とも言える2人の新たな挑戦を今回世界初演できること、そしてエコによるインドネシアの「辺境」のダンス探究、ピチェによるタイ古典舞踊の59の型の「次に来るもの」の探究という非常に長い時間と労力をかけた実践に、日本のプラットフォームがごく自然にコミットできるという状態が実現していることは、アジアにおける国際共同製作のスキームと実績構築をミッションのひとつとしたこの5年間の大きな成果です。

また、今回は横浜に移って10回目の開催という節目でもあります。人が実際に働いているオフィスでのパフォーマンスで横浜での第1回TPAM(2011年)に参加し、その後Offsite Dance Projectと共に横浜でサイト・スペシフィックな国際コラボレーションを展開したfieldworks / ハイネ・アヴダル & 篠崎由紀子は、今回異なる形式のオリジナル作品を3作上演します。諸領域を開き、拡張し、接続するという「コンテンポラリー・ダンス」の特質が高度に発揮され世界の精密な読解へとつながる、このジャンルの到達点の一つとも言える作品群です。

そして、劇団態変の身体表現は、生きることそのものが闘争であると私たちに教えてくれることでしょう。第1回TPAMが開催された1995年当時、私が現在理事長を務めるPARC – 国際舞台芸術交流センターが事務局を預かっていたTIF(東京国際舞台芸術フェスティバル)のプログラムのうち、2作品がTPAMのショーケースとしてピックアップされ、その1つが劇団態変の作品でした。25年の時を経て深化している態変の最新作が今回小倉由佳子ディレクションで紹介されること、主宰の金滿里さんに基調講演をしていただけること(詳細は後日発表します)に、継続の重みを感じるとともに、作品を通して時代の変化を強く感じます。

 

前回のご挨拶で、私は日本の芸術祭の傾向について、持てる者と持たざる者の分断、専門性の後退とポピュリズムなどの観点から漠然とした懸念を表現しました。漠然とした、というのは、当時は自分なりに明瞭に言ったつもりだったことよりも、現在の状況そのもののほうがずっと明瞭だからです。大文字の歴史の書き換えが盛んな転機に立ち合わざる得ない同時代の人間の良心の現れは、集団による叫びか、声なき声のどちらかに二分されているかのようです。この現実の中で、芸術の持つ可能性は改めて計り知れないと感じます。素晴らしい芸術を通して感性と想像力を高める機会を観客に届けることに従事する舞台芸術の専門家の皆様にとって実りある9日間となるよう、スタッフ一同取り組んでいます。

末筆になりましたが、今回も会場を開いてくださいましたKosha33の皆様をはじめ、改めて関係者の皆様に心より御礼を申し上げます。