異なる国のアーティストが協働して作品をつくるインターナショナル・コラボレーションは90年代以降数多く試みられ、多くの成果を揚げてきました。この背景には公的な支援制度が国際的に活用される際、一方向から双方向へ向かう大きな流れを作る事に成功し、制度がその共同体を越えて芸術を支える価値の認知を広めましたが、例えば支援する国家の同国人が参加するなどの「条件」が「学習」以上の成果の可能性を阻むこともあり、「制度的」とその限界を問われることもあります。

一方、作品創作にあたり複数の組織が国境を越えて支え合う国際共同製作=コプロダクションは近年数多くのフェスティバルや劇場が取り入れています。コラボレーションよりも創作そのものに寄り添う仕組みですが、経済的同条件や文化的文脈の類似などが前提され、芸術への支援状況の格差や社会制度の違いを越えての協働が難しいなどの課題があり、アジア域を見渡すとまだまだマイナーな仕組みです。

これら課題を乗り越えアジア域での国際共同製作を実現するにあたり、まずは作品づくりの当事者であるアーティストの声を集めることから始めたいと考えました。

このミーティング・プログラムは映像展示をする「アジアン・アーティスト・インタビュー」の概要についてのセッションの他、国際共同製作を始めようとしている/始めているアジアのアーティスト達が自身の活動についてプレゼンテーションをします。

• つくる人:無料
• みる人:¥500
※ 参加方法/チケットについて

2.8 Sun 10:30-13:00
ヨコハマ創造都市センター(YCC)3F
日英同時通訳あり

アジアン・アーティスト・インタビューとこれからの共同製作

TPAMは、アジアにフォーカスした共同製作のための継続的なリサーチとして「アジアン・アーティスト・インタビュー」プロジェクトを実施しています。当セッションは、そのインタビュアーとなった日本のアーティストを交えてのプロジェクト紹介と、実践家たちによる今後の共同製作のあり方への提案・議論の、二部で構成されています。後者では、コンセプチュアルに制作プロセスを構成し提供するような、国際的なプラットフォームの可能性を探ります。

スピーカー

 

 

市原幹也(演出家)
演出家。劇団のこされ劇場≡主宰。演劇センターF芸術監督。2005年より北九州芸術劇場にて演出作品を発表。2009年からは劇団によって商店街のなかに民間劇場を立ち上げ、地域に密着した運営と創作を展開。5年に渡り芸術監督を務めた「えだみつ演劇フェスティバル」の先進的な取り組みは国内外から注目を得る。作品が国際的な演劇祭へ招聘される一方で、子供から高齢者まで幅広い年齢層の市民を対象にした創作や、コミュニティプログラムを多数実施。これらの活動が評価され平成24年度北九州市民文化奨励賞を受賞。現在は、現代アートの国際展「横浜トリエンナーレ」サポーター活動の年間顧問・講師も務める。

Photo by Yoshimi Sugawara

Photo by Yoshimi Sugawara

奥野将徳(制作者)
1982年生まれ。舞台芸術の企画・制作。プリコグ所属。広告代理店勤務を経て、2005年よりプリコグメンバーとして、「吾妻橋ダンスクロッシング」「ニブロール」「ミクニヤナイハラプロジェクト」「康本雅子」「ASA-CHANG&巡礼」などの企画・制作を担当する他、個人的に「ほうほう堂」の制作を務める。

塚原悠也(contact Gonzoディレクター)
羽鳥嘉郎(演出家)
マーク・テ(演出家、キュレーター、研究者)
プロフィールはTPAMコプロダクション アジアン・アーティスト・インタビューのページへ

2.8 Sun 14:00-15:15
ヨコハマ創造都市センター(YCC)3F
日英同時通訳あり

アーティスト・プレゼンテーション1:チョイ・カファイ

アジア地域での「コンテンポラリーダンス」の系譜学をさぐる、カファイの最近作『ソフトマシーン』。2012年より5カ国13都市でリサーチを重ね、インタビューを記録したダンスの作り手は88人にのぼります。収集されたビデオとドキュメンタリーパフォーマンスの制作からなるこのプロジェクトを踏まえた、現在の展望を聞きます。共同製作の糸口としてインタビューを実施しているTPAMコプロダクションを照射するセッションとなるでしょう。

スピーカー

 

 

チョイ・カファイ(アーティスト)
1979年、シンガポール生まれ。アーティスト、パフォーマンス・メーカー、思弁的デザイナー。未来の不確実性を包含する諸歴史と諸理論に着想を得ている。彼のリサーチは人間身体の条件づけ、その無形の記憶、その表現を形づくる力を理解したいという欲望から発している。これらのファクターは、アート、デザイン、テクノロジーの交差点において、複雑なアーティキュレーションへと収束していく。
シンガポールのナショナル・アーツカウンシルの奨学金を得て、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートにてデザイン・インタラクションを専攻。2010年にシンガポール・ヤング・アーティスト・アワードを受賞。作品は第25回8月のダンス/Tanz Im August(2013)、シンガポール・アーツ・フェスティバル(2012)、フェスティバル/トーキョー(2011)、第2回アジアン・アート・ビエンナーレ(2009)、第3回福岡アジア美術トリエンナーレなどで紹介されている。また、エルサレムのイスラエル博物館(2012)、ロンドンのホワイトチャペル・ギャラリー(2010)、シンガポール・アート・ミュージアム(2009)、ベルリンの世界文化の家(2005)などで展示も行なっている。

2.9 Mon 10:30-11:45
ヨコハマ創造都市センター(YCC)3F
日英同時通訳あり

アーティスト・プレゼンテーション 2:劇場/劇団 デモクレイジー

劇場/劇団 デモクレイジー。「デモクラシー」と「クレイジー」を掛け合わせた意味深長なネーミングを持つこのアーティスト・コレクティブの共同芸術監督のタナポン・ウィルンハグンに、著名人に対しての人々の熱狂を観察するプロセスを演出したコンテンポラリー・ダンス作品『Hipster The King』などの活動を紹介してもらいます。また今回『幼女X』を彼とともに演出する範宙遊泳の山本卓卓も交えて話を聞きます。

スピーカー

タナポン・ウィルンハグン(アーティスト、振付家、演出家、ダンサー)
山本卓卓(作家、演出家)
プロフィールはTPAMディレクション 範宙遊泳×Democrazy Theatre『幼女X』のページへ

2.9 Mon 14:00-15:15
ヨコハマ創造都市センター(YCC)3F
日英同時通訳あり

アーティスト・プレゼンテーション3:マーク・テ

マレーシアの政治史に応答する実践をおこなっている、マーク・テ。中でも、マラヤ共産党に関する諸資料 — バリン会談の採録をはじめとする — のリサーチは、これまでのキャリアのほとんどを通じて継続しているものです。彼はそれに連なる作品を、今秋オープニングを迎える韓国・光州のアジアン・アーツ・シアターで発表予定です。そのビジョン、方法について、詳しくうかがいます。

スピーカー

マーク・テ(演出家、キュレーター、研究者)
プロフィールはTPAMコプロダクション アジアン・アーティスト・インタビューのページへ

2.9 Mon 16:00-17:15
ヨコハマ創造都市センター(YCC)3F
日英同時通訳あり

アーティスト・プレゼンテーション4:エコ・スプリヤント

TPAMディレクションにて上演される『Cry Jailolo』は、インドネシア東部の西ハルマへナ島においてTeluk Jailolo Festivalの設立と並行してクリエーションされたものです。このセッションでは、フェスティバルの経緯、300人の若者が出演した初演について、詳しくうかがいます。

スピーカー

エコ・スプリヤント(ソロ・ダンス・スタジオ設立者・芸術監督、振付家)
プロフィールはTPAMディレクション エコ・スプリヤント『Cry Jailolo』のページヘ

2.11 Wed 12:30-13:45
KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
日タイ英通訳あり

アーティスト・プレゼンテーション5:ピチェ・クランチェン

バンコクにスタジオを構え、カンパニーメンバーとの緊密な稽古を通して制作した作品を世界各地で上演するピチェ・クランチェン。その創作環境について詳しくうかがいます。そしてまた『ピチェ・クランチェンと私』初演から10年を数え、彼が現在考える、同時代性とはどのようなものなのでしょうか?

スピーカー

ピチェ・クランチェン(振付家、ダンサー)
プロフィールはTPAMディレクション ピチェ・クランチェン『Black & White』のページへ