批評的舞台芸術と舞台芸術批評について — ポピュリズムの時代を迎えて

捩子ぴじん、島崎ろでぃー、ソ・ドンジン、桜井圭介、内野儀、オン・ケンセン、武藤大祐

BankART Studio NYK 2F 2B Gallery
横浜市中区海岸通3-9(地図で見る)
2.11 Sat15:00-16:30 (Part 1)
17:00-21:00 (Part 2)
プロフェッショナル¥0
オーディエンス¥500(当日)
日英通訳あり

敵を(意図的に)誤認し排除することがポピュリズムの性質のひとつであるならば、ポピュリズムの時代に「批評」「批判」は何をその対象とするのでしょうか。誰も暑さを感じない世界において、熱とは何でしょうか。舞台芸術(の仕事)の文脈において、拙速に答えを求めずにこの問いを問う機会をTPAMなりに設け、今年の「基調」ミーティングとします。


15:00-16:30
第1部: 「Our Masters — 土方巽」について
スピーカー:捩子ぴじん、島崎ろでぃー、ソ・ドンジン
 

昨年5月にアジアン・カルチャーセンター・シアター(韓国・光州)で実施された「Our Masters — 土方巽」。キュレーターを務めた捩子ぴじんは、「前衛」「60年代」のアイコンとしての土方巽を回顧するのではなく、同時代の日本と韓国の社会的状況に引きつけた視点でプログラムを組みました。プログラムに参加した島崎ろでぃー(写真家)、ソ・ドンジン(批評家)と共に、その成果を振り返ります。

17:00-21:00(途中休憩あり)
第2部:ポピュリズム時代に舞台芸術批評は可能か
スピーカー:桜井圭介、内野儀、オン・ケンセン
モデレーター:武藤大祐

批評家として「コンテンポラリー」ダンスという概念を独自に展開し、「Our Masters — 土方巽」ではアドバイザーを務めた桜井圭介氏、「Japan/Junk」の「J」を冠した「J演劇」の出現と変化を長年に渡って論じ、舞台芸術の「トランスナショナルな移動性」に注目した最新の論考を昨年上梓した内野儀氏を迎え、批評の不在を嘆きその復権を望む声がしばしば聞かれる現在の状況について自由に議論します。議論の進行はアジア、オルタナティヴ、グローバルをつなぐ思考を構築しているダンス批評家・武藤大祐氏。

議論を始めるにあたり、シンガポール国際芸術祭ディレクターのオン・ケンセン氏が、ポピュリズムの圧力とシンガポールにおける検閲をめぐる批評的意識、文脈、法的見地を共有します。アートに関わる者として、「パブリックな不在」を増大させることなく、多様性とインクルージョンを可能にするようなパブリック・スペースをどのようにすれば保持していけるのか? 後半では第一部の登壇者も加わっての会場の皆さんとのディスカッションを予定しています。途中休憩あり。

捩子ぴじん(ダンサー/振付家)

2000年から2004年まで大駱駝艦に所属し、麿赤兒に師事。2011年、横浜ダンスコレクションEX審査員賞、フェスティバルトーキョー公募プログラムF/Tアワード受賞。セゾン文化財団2015〜16年度ジュニア・フェロー。2016年、アジアン・カルチャー・センター・シアター(韓国・光州)にてシーズンプログラム「Our Masters — 土方巽」キュレーター。

Photo by Kazuya Kato

Photo by Kazuya Kato

島崎ろでぃー(写真家)

1973年東京都杉並区生まれ。元パンクス。2009年よりフリーの写真家として雑誌やウェブ媒体などで活躍。著書『ひきがね』(ころから)。HP【Rody’s Bullets】http://shimazakirody.com。

 

 

ソ・ドンジン(批評家/桂園造形芸術大学 インターメディア・アート学部 准教授)

芸術理論とヴィジュアル・カルチャー研究を韓国・桂園造形芸術大学で教える。『Big Big Thank you』(2016)、『CROSS-CUT 2015』などの作品でドラマトゥルク、国立現代舞踊団「コレオグラフィー・ラボ」で2014〜16年インストラクターを務める。光州ビエンナーレ『Journal Noon』編集長、季刊『Culture/Science』編集者。著書に『弁証法の午睡:敵対と政治』(2016)、共著に『可能なもうひとつの世界:マルクス主義と日常生活の変容』(2015)など。

 

 

桜井圭介(音楽家/ダンス批評)

ソロ・アルバム『IS IT JAPAN?』『ヒネミ』、著書に『西麻布ダンス教室』など。2004年〜2013年「吾妻橋ダンスクロッシング」をオーガナイズ、2010年からスペース「SNAC」を運営。音楽家として、遊園地再生事業団、地点、ミクニヤナイハラ等、演劇・ダンスとの協働も。

 

 

内野儀(東京大学大学院総合文化研究科 パフォーマンス・スタディーズ 教授)

1957年京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、東京大学教授。専門はパフォーマンス研究。著書に『メロドラマの逆襲』(1996)、『メロドラマからパフォーマンスへ』(2001)、『Crucible Bodies』(Seagull Books、ロンドン、2009)、『J演劇の場所』(2016)等。セゾン文化財団評議員、神奈川芸術文化財団理事、アーツカウンシル東京ボード委員、ZUNI Icosahedron Artistic Advisory Committee委員。

 

 

オン・ケンセン(演出家/シンガポール国際芸術祭 フェスティバル・ディレクター)

シンガポール国際芸術祭ディレクター、アーツ・ネットワーク・アジア創設者。演出家としてコンテンポラリー・アートにおけるアジア的美学の進化、それに伴うトランスグローバリゼーションに貢献してきた。国際的に知られる「フライング・サーカス・プロジェクト」を開始、また、『リア』(1997)に始まるシェイクスピア3部作も高い評価を得ている。2016年には、彼のトレードマークであるコンテンポラリーなスタイルでのアジアの伝統的アーティストとのコラボレーションで、野田秀樹作『三代目、りちゃあど』を演出した。

Photo by Jeannie HO

Photo by Jeannie HO

武藤大祐(ダンス批評家/群馬県立女子大学文学部 准教授/振付家)

20世紀のアジアを軸とするダンスのグローバル・ヒストリー、および振付の理論を研究。共著『Choreography and Corporeality』(Palgrave Macmillan、2016年)、『バレエとダンスの歴史』(平凡社、2012年)、論文「アーティストが民俗芸能を習うということ」(『群馬県立女子大学紀要』第38号、2017年)など。三陸国際芸術祭プログラムディレクター(海外芸能)。

Photo by Satoshi Nisizawa

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